Factorio 2.0で、流体システムは根本から生まれ変わりました。1.1時代の「なんとなく動くけど、なぜ動くかわからない」流体力学は過去のもの。2.0では予測可能で、視覚的に確認でき、設計の意図がそのまま反映されるシステムに進化しています。
この記事では、Factorio 2.0の流体メカニクスを基礎から応用まで徹底解説します。パイプラインの範囲制限、ポンプのスループット、流体列車の活用、そしてSpace Ageで追加された新流体まで——流体に関する疑問をすべて解消しましょう。
※ 流体システムの改修についての公式解説は、Friday Facts #430(日本語訳)も併せてご覧ください。
1. Factorio 2.0で流体システムはどう変わったのか
1.1時代の問題点
Factorio 1.1の流体システムは、多くのプレイヤーにとって「ブラックボックス」でした。パイプを長く伸ばすとスループットが謎に低下し、T字接続で流体が逆流し、原油処理施設のレイアウトは試行錯誤の連続。「とりあえずポンプを置いておけ」が定番のアドバイスで、なぜそれが有効なのか説明できる人はごく少数でした。
根本的な原因は、1.1の流体アルゴリズムがタイルごとの圧力シミュレーションに依存していたことです。各パイプセグメントが個別に流体量を計算し、隣接タイルとの差分で流量を決定していました。この方式は直感に反する挙動を多く生み出していました。
2.0の設計思想:「パイプライン」という概念
2.0では、流体の計算単位が「個々のパイプタイル」から「パイプライン(Pipeline)」に変わりました。ポンプからポンプまで(またはポンプから末端まで)がひとつの「パイプライン」として扱われ、そのパイプライン全体で流体の入出力が計算されます。
これにより、パイプラインの途中にあるパイプの形状(直線、カーブ、T字)がスループットに影響しなくなりました。重要なのは「パイプラインの長さ」と「ポンプの配置」だけです。FFF #430で開発チームが述べたように、この変更は流体システムの「予測可能性」を最優先した結果です。
2. パイプラインの範囲制限(Extent System)
250×250タイルの制限
2.0最大の変更点のひとつがパイプラインの範囲制限(Extent)です。ひとつのパイプラインは、250×250タイルの矩形範囲内に収まる必要があります。
この制限を超えると、パイプラインは機能しなくなります。ゲーム上では警告が表示され、流体が流れなくなります。
具体的な計算方法:
- パイプライン内のすべてのエンティティを含む最小の矩形(バウンディングボックス)を計算
- その矩形のX方向の幅、Y方向の高さがそれぞれ250タイル以下であれば有効
- パイプの実際の経路長ではなく、端から端までの直線距離で判定される
つまり、L字型に曲がったパイプラインでも、水平方向に200タイル+垂直方向に200タイルの範囲に収まっていれば問題ありません。逆に、一直線に251タイル伸ばすとアウトです。
範囲を超えるときの対処法:ポンプで分割
長距離のパイプラインが必要な場合は、途中にポンプを設置してパイプラインを分割します。ポンプはパイプラインの境界として機能するため、ポンプを挟むことで各セグメントが個別のパイプラインになります。
設計の目安:
- 200タイルごとにポンプを1基設置するのが安全
- 余裕を持って150タイル間隔にするのも良い選択
- ポンプは流体の流れ方向を固定するため、意図しない逆流を防ぐ効果もある
3. ポンプのスループットと品質スケーリング
基本スループット:1200/秒
ポンプの基本スループットは1秒あたり1200単位です。これは1.1時代と変わりませんが、2.0ではこの数値がより「信頼できる」ものになっています。パイプラインの形状に左右されず、ポンプが設定したスループットがそのまま実現されるからです。
1200/秒が意味するもの:
- 1秒 = 60tick、つまり1tickあたり20単位の流体を移動
- ボイラー1基の水消費量は6/秒(蒸気機関2基分)
- ポンプ1基でボイラー200基分の水を供給可能(理論値)
- 原油精製所1基の原油消費量は約6.67/秒(基本レシピ)
品質(Quality)によるスケーリング
Space Ageの品質システムはポンプにも適用されます。高品質のポンプはスループットが向上します。
品質別ポンプスループット:
- ノーマル:1200/秒(基本値)
- アンコモン:1560/秒(+30%)
- レア:1920/秒(+60%)
- エピック:2400/秒(+100%)
- レジェンダリー:3000/秒(+150%)
レジェンダリーポンプは、ノーマルの2.5倍のスループットを発揮します。大規模な工場では、ポンプの品質向上がボトルネック解消に直結します。
4. 流体ワゴン(Fluid Wagon)
容量:50,000単位
流体ワゴン1両の容量は50,000単位です。これは2.0で変更はありませんが、パイプラインシステムの改善により、流体列車の積み下ろしがよりスムーズになっています。
流体ワゴンの活用場面:
- 原油を油田から本拠地へ輸送
- 水を遠方の前哨基地へ供給
- 硫酸をウラン採掘場へ配送
- Space Ageの惑星間で流体を運搬(ロケットカーゴ経由)
流体列車 vs パイプライン:どちらを選ぶか
距離と必要量に応じて使い分けましょう。
パイプラインが適するケース:
- 距離が500タイル以内
- 必要量が安定している
- レイアウトがシンプルで、ポンプ2〜3基で済む場合
- 設置の手間を最小化したい序盤
流体列車が適するケース:
- 距離が500タイル以上
- 大量の流体を安定供給する必要がある
- 複数の供給先へ分配したい
- 後から供給量を拡張する可能性がある
バレル化(Barreling)という選択肢:
流体をバレル(樽)に詰めてアイテムとして輸送する方法もあります。バレル1個には50単位の流体が入り、通常の物流ネットワーク(ベルト、ロボット、列車の貨物ワゴン)で運搬できます。バレル化は流体ワゴンが使えない場面や、少量の流体を多品目輸送したい場合に有効です。ただし、バレルの組立・分解に組立機が必要なため、インフラコストが追加されることに注意してください。
5. 水と蒸気の関係:1:10の変換比率
ボイラーで水を蒸気に変換するとき、体積比は1:10です。つまり、水1単位から蒸気10単位が生成されます。
これが設計に与える影響:
- 水の供給パイプは1本で十分でも、蒸気の排出パイプは10倍のスループットが必要
- ボイラーの蒸気出力側には、十分な数のパイプラインまたはポンプを用意すること
- 汲み上げポンプ1基(1200/秒の水供給)で理論上12,000/秒の蒸気を生成
実用的な設計例:
20基のボイラーと40基の蒸気機関のセットアップを考えます。ボイラー20基の水消費量は120/秒。汲み上げポンプ1基で余裕を持って供給できます。しかし蒸気側は1200/秒の出力になるため、蒸気パイプラインの設計がボトルネックにならないよう注意が必要です。
6. パイプラインの可視化機能
流体エンティティのホバー表示
2.0で追加された便利な機能のひとつが、流体関連エンティティを手に持った状態でのパイプライン可視化です。
使い方:
- パイプ、ポンプ、地下パイプなど流体関連のアイテムをインベントリから手に持つ
- 既存のパイプラインにマウスカーソルを近づける
- パイプラインの範囲、接続状況、流体の種類が色分けで表示される
この機能は設計時のデバッグに非常に有用です。「なぜこのパイプに流体が流れないのか?」という問題の原因を素早く特定できます。パイプラインが範囲制限を超えている場合も、この可視化で一目瞭然です。
マップビューでの流体表示
マップビュー(Mキー)でも流体の状態を確認できます。マップの表示オプションから流体の表示をトグルすることで、工場全体の流体ネットワークを俯瞰できます。大規模な工場では、この機能でボトルネックの位置を特定するのが効率的です。
7. 流体フローアルゴリズムの基本
出力レートは充填率に比例する
2.0の流体アルゴリズムで最も重要な原則は、「パイプラインの出力レートは、そのパイプラインの充填率(fullness)に比例する」というものです。
これが意味すること:
- パイプラインが100%充填されていれば、最大スループットで出力
- パイプラインが50%しか充填されていなければ、スループットは半分
- パイプラインが空に近ければ、出力はほぼゼロ
この仕組みは直感的ですが、設計に重要な示唆を与えます。
設計への影響:
- パイプラインを常に「満タンに近い」状態に保つことがスループットの鍵
- 需要が供給を上回ると、充填率が下がり、さらに出力が低下する悪循環が発生
- ポンプを使ってパイプラインを分割し、各セグメントの充填率を独立させるのが有効
- タンクをバッファとして設置することで、需要の変動を吸収できる
パイプラインの容量計算
パイプライン内の各エンティティには内部容量があります。
- パイプ:100単位/タイル
- 地下パイプ:100単位 × 接続距離
- 貯蔵タンク:25,000単位
パイプラインの総容量が大きいほど、充填率が安定しやすくなります。需要が一時的に増えても、バッファとして機能するためです。逆に言えば、短いパイプラインは充填率の変動が大きく、スループットが不安定になりやすい傾向があります。
8. Space Ageの新流体
Space Age DLCでは、各惑星に固有の流体が追加されました。これらは流体システムの基本ルールに従いつつ、それぞれユニークな利用場面を持っています。
アンモニア溶液(Ammoniacal Solution)
グラウビスで採取できるアンモニア系の溶液です。バイオ系のレシピに使用され、バイオラボやバイオ研究に欠かせない原料です。グラウビス特有の生態系と組み合わせた生産チェーンは、他の惑星にはない独特の設計を要求します。
フルオロケトン(Fluoroketone)
冷却材として使用される特殊な流体で、主にクライオジェニック(極低温)プラントで使用されます。高品質モジュールの冷却やクライオジェニックサイエンスパックの生産に必要です。フルオロケトンの生産と循環システムの設計は、アクイロでの活動における主要な課題のひとつです。
溶岩(Lava)
ヴルカヌスの地表から採取できる超高温の流体です。溶岩は通常のパイプでは輸送できず、専用の耐熱パイプが必要です。鋳造プロセスの原料として使用され、ヴルカヌスの工業基盤を支える最も基本的なリソースです。溶岩から金属を精錬する鋳造所(Foundry)は、ヴルカヌスでの生産の中心です。
フルゴラの重油(Heavy Oil on Fulgora)
フルゴラでは、地表のスクラップから重油を回収できます。ノーチラスの残骸から得られるこの重油は、通常の石油精製とは異なるルートでプラスチックや固形燃料を生産するために使われます。フルゴラでは水が入手困難なため、重油ベースの生産チェーンが主流となります。これは流体設計において独特の制約と創造性を要求するものです。
9. よくある失敗と対策
失敗1:パイプラインが範囲制限を超えている
症状:パイプを長く伸ばしたら流体が流れなくなった。
原因:パイプラインが250×250タイルの範囲を超えています。
対策:途中にポンプを設置してパイプラインを分割しましょう。200タイルごとにポンプを入れるのが安全です。流体エンティティを手に持って既存のパイプラインを確認し、範囲がどこまで伸びているか視覚的にチェックするのも有効です。
失敗2:ポンプを設置していない
症状:パイプラインのスループットが低い。蒸気機関が動いたり止まったりする。
原因:パイプラインにポンプがないため、充填率の変動がスループットに直結している。
対策:パイプラインの入口(供給元の直後)と出口(消費先の直前)にポンプを設置しましょう。ポンプはパイプラインを分割してセグメント化するだけでなく、流体を能動的に押し出すことでスループットを安定させます。特に生産施設の入力側にポンプを置くと効果的です。
失敗3:異なる流体の混合
症状:パイプを接続しようとしたらエラーが出る。または工場の一部が停止している。
原因:Factorioでは、ひとつのパイプラインに異なる流体を流すことはできません。水と蒸気、原油と潤滑油など、異なる流体のパイプラインが意図せず接続されている可能性があります。
対策:2.0の可視化機能を使って、各パイプラインにどの流体が流れているか確認しましょう。異なる流体のラインは物理的に離して敷設するか、地下パイプを使って交差させましょう。パイプラインの分岐点には特に注意が必要です。
失敗4:蒸気の膨張を考慮していない
症状:ボイラーの蒸気出力が詰まり、ボイラーが停止する。
原因:水→蒸気の1:10変換比率により、蒸気側のパイプラインに水の10倍の容量・スループットが必要。
対策:蒸気出力側のパイプラインを太くするか、タンクを設置してバッファを確保しましょう。ポンプを蒸気パイプラインにも設置してスループットを確保するのが最も確実な方法です。
失敗5:地下パイプの間違った使い方
症状:地下パイプが意図しないパイプラインに接続されている。
原因:地下パイプは同じ種類・同じ方向の最も近い相手に自動接続されます。密集した配管では意図しない接続が発生しやすいです。
対策:地下パイプの設置後は必ず接続先を確認してください。可視化機能を使うと一目瞭然です。密集配管では、通常のパイプの方が安全な場合もあります。
10. Q&A:よくある質問
Q:パイプの長さでスループットは変わる?
A:2.0では、250×250タイルの範囲内であれば、パイプの長さは最大スループットに影響しません。1.1時代のような「距離による減衰」は過去のものです。ただし、パイプラインの充填率がスループットに影響するため、長いパイプラインは充填に時間がかかるという点では間接的に影響があります。
Q:ポンプの電力消費はどのくらい?
A:ポンプの電力消費は30kWです。蒸気機関1基(900kW出力)で30基のポンプを稼働できる計算です。電力コストとしては非常に小さいため、迷ったらポンプを置くという方針で問題ありません。
Q:汲み上げポンプ(Offshore Pump)にも範囲制限はある?
A:汲み上げポンプ自体に範囲制限はありませんが、汲み上げポンプから始まるパイプラインには250×250タイルの制限が適用されます。汲み上げポンプの出力は1200/秒で、通常のポンプと同じです。
Q:タンクはパイプラインを分割する?
A:いいえ、タンクはパイプラインを分割しません。タンクはパイプラインの一部として扱われ、大きなバッファとして機能します。パイプラインを分割するのはポンプだけです。
Q:T字接続はスループットに影響する?
A:2.0では、T字接続の形状自体はスループットに影響しません。ただし、T字接続は流体の分配点になるため、複数の消費先に流体を分ける場合は、各方向に十分な供給があるか確認してください。ポンプで各ラインを分離するのが最も確実です。
Q:流体のバッファはどのくらい用意すべき?
A:一般的には、消費量の30〜60秒分のバッファがあると安定します。たとえば毎秒100単位消費する施設なら、タンク1基(25,000単位)で約4分のバッファが確保でき、十分すぎるほどです。過剰なタンク設置は資源の無駄になるので、必要最小限に留めましょう。
まとめ
Factorio 2.0の流体システムは、1.1時代と比べて格段に予測可能で扱いやすくなりました。重要なポイントをおさらいしましょう。
- パイプラインは250×250タイルの範囲制限がある。超える場合はポンプで分割
- ポンプのスループットは1200/秒。品質でさらに向上(レジェンダリーで3000/秒)
- 流体ワゴンは50,000単位。長距離輸送には流体列車が効率的
- 水→蒸気は1:10の比率。蒸気側のパイプライン設計に注意
- パイプラインの可視化を活用してデバッグ。流体アイテムを手に持つだけでOK
- 出力レートは充填率に比例。パイプラインを満タンに保つ設計が高スループットの鍵
- 迷ったらポンプを置く。電力コストはわずか30kW
流体は最初こそとっつきにくいですが、2.0のシステムを理解すれば、ベルトと同じくらい直感的に設計できるようになります。ぜひこの記事を参考に、効率的な流体ネットワークを構築してください。
流体システム改修の詳細については、Friday Facts #430(日本語訳)もぜひご覧ください。開発チームがどのような思想でこのシステムを設計したか、深く理解できるはずです。